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二話


勇孝は、よく道路で犬や猫が轢かれているのを見て、なんて残酷なのだといつも思っていた。まさか、自分が加害者になってしまうとは思いもよらなかった。血の気が引くとはまさにこのことだ。
子犬は、ずっと泣いている。勇孝はその子犬を腫れ物にでも触れるように抱きかかえた。
「何で、飛び出してくんだよ。」
「どこの家の子犬だ。」
独り言ともとれる質問を、雄也にぶつけていた。
「とにかく病院へ運ばなくちゃ。」
雄也は冷静に答えた。
動物病院は自転車で近道をすれば、ものの五分もかからない距離にある。しかし、勇孝には一時間も自転車を漕いだような感覚が足にあり、額からは汗がしたたり落ちた。初夏のすがすがしさとは正反対に、冬の寒い日の曇りにしか思えない。なんで、こんなことが起きてしまったんだ。勇孝は自問自答を繰り返す。汗と涙で顔はぐしゃぐしゃになっていた。
「先生、子犬は大丈夫ですか。」
雄也は息を切らせながら、すがるような目で問いかけた。雄也も、勇孝と同じように心配していた。
二人には白い子犬が、今にも息絶えそうに見える。
「先生・・・・・・。」
勇孝は言葉ともつかぬ声を発し、子犬を見つめている。その子犬は、死んでしまったかのようにぐったりとしている。
医者は、一呼吸おいて子犬の状態を説明した。
「命に別状はありませんね。おそらく右足骨折ですね。」
医者は、顔色一つ変えずに言った。
勇孝は命に別状がないという言葉を聞いたら、涙が滝のように溢れてきた。
二人は病院から出ると、ぐったりと疲れてしまっていた。
「でも、命に別状なくてよかったな。」
「ああ。」
勇孝は、子犬が気になってしょうがない。
「でも、あの子犬には飼い主いんのかな。」
「どうだろうなあ、首輪はしてなかったな。」
二人はつい先程起こった事故を思い出し、白い子犬の姿を思い浮かべていた。
「とりあえずさあ、子犬の飼い主探してみなくちゃな。」
「でも、どうやって探す。」
勇孝には、どのように子犬の飼い主を探したらいいのか見当もつかない。
「坂の辺りの家を回ってみるか。」


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