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二十二話


勇孝とあまり気の合わない風間光が、クラスメイト達に聞こえるように言った。
勇孝は、自分にも銃を向けられることを覚悟していたため、平然と澄ましている。
「ごめん。」
これ以上反感をかわないように、詰めの一手を打った。ただ一言だけだが、クラスメイト達の怒りを代表し、暴力を受けた勇孝の目の下の腫れと唇の腫れを見ては、それ以上文句の付けようがなく、怒りの矛先は三井へと向けられた。
「なあ、でもさあ、勇孝は俺らの意見を言ってこうなっちまったわけで、なんにも悪くないと思わない。それよか先生は、こんなに勇孝に怪我をさせたのに謝りもしないで、逆に勇孝が謝ってんだぜ。その原因の席替えもしないって言ってんだから、マジでムカつくよな。」
太一が、周りにいる友人達だけに聞こえるように言った。
「ああ、マジでムカついてきたよ。」
「そうだよな、勇孝の顔見てみろよ。あいつが一番かわいそうだぜ。」
「三井って最低の教師だよな。」
光と仲のよい松村貴志も、三井の文句に参加してきた。
生徒らは小さな声で、三井に聞かれないようにこそこそと話している。
勇孝は、彼らの話しに耳を傾けながらほくそ笑んでいる。
勇孝への不信感は元々薄く、雲が消えるように跡形もなくなった。
「席替えしないんだってさ。」
歩が一歩進んだ。三井にも聞こえるか聞こえないかぐらいの大きさで、女子生徒が頬を膨らませながら言った。
「なんだよ、席替えしねえのかよ。」
光が、甲高い声で言った。
勇孝が暴力を受けた時は誰も不満を口にせず、彼一人がみんなの意見を主張して体罰を受ける結果となったが、今回勇孝は参加せずにクラスメイト達を操作して、三井に.憎悪を向けさせることとなった。
「勇孝が謝ってんのに、席替えしねえってのはどういうことだよ。」
後ろの席に座っている男子生徒が、前の生徒の背が高いことをいいことに、隠れながら強気に言った。そのため三井は、誰が言ったのか分からずにいた。三井に聞こえるように言ったことによって、他の生徒達からも、さらに不満の声があがった。
「席替えしようぜー、席替え。」
貴志が、皆の意見を求めるように言った。
「勇孝が謝ったんだからさー、席替えしてもいいと思うんだけどなあ。」
「そうだよなあ。」
「席替えしてえよな。」
「いい加減に席替えして欲しいよ、マジで。」



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