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四話


雄也も心底疲れてはいたが、たくさんの家を回った。
公園では、仕事を終えた雄也の父親ぐらいの年齢の人が、犬に話しかけながら散歩を楽しんでいる。
とても穏やかな風が吹いていた。
雄也は犬を飼っている人なら知っているかもしれないと思い、おじさんの所へ駆け寄った。
「すいません、おじさん。」
「なんだい。」
「おじさんは、この辺の人ですか。」
「そうだよ。」
「この辺で、白い子犬を飼ってる人知りませんか。」
「うーん、ちょっと分からないねえ。おじさんは最近この犬を飼ったばかりで、あまり近所の飼い主の人とお付き合いしてないからね。」
とても親切そうな人である。話し方にしても人柄が表れている。
「何かあったのかい。」
雄也は、これまでの経緯を話した。そのおじさんには、とても懐かしい匂いがする。雄也の伯父さんの影がその人にはあったので、事故のことを詳しく話していた。
雄也の伯父さんは去年亡くなっていたが、雄也にはその実感が全くなかった。伯父さんはまだ生きていると、そう思える瞬間があった。
夢の中で伯父さんはまだ生きていた。心地よい朝日を浴びて目を覚ますと、伯父さんはまだ生きているのではないかと一瞬思うが、止め忘れた目覚まし時計を止める頃には、もうこの世にはいないと自覚してしまう。
「大変だったね。」
おじさんは、気の毒そうに呟いた。
「実はおじさんも、車で子猫を轢いてしまったことがあるんだ。」
「その子猫は、どうなったんですか。」
 雄也は、ゴクンと唾を飲み込んだ。
「助からなかった。」
「そうですか・・・・・・。」
 しばらく、沈黙が続いた。
「私の場合は助からなかったけど、君たちは不幸中の幸いでその子犬は骨折だけですんだ。その子犬には生きていく力があるが、一人では生きられない。だから、飼い主が見つからない場合も考えておかなくちゃならないよ。」
 雄也は、伯父さんの優しく語りかけるような話し方を思い出していた。
「はい、子犬の飼い主が見つからなかったら、俺が引き取ろうと思ってます。」
「そうか、君は偉いな。」


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